アメリカで売ってる鶏について

過去記事まるごと鶏のスープのレシピに書いた内容ですが、食材やお料理についてのお勉強的なことについて独立したカテゴリ「調べてみたよ」に再アップすることにしました。未読の方はごらんくださいませ。

 アメリカってけっこう鶏を丸ごと売ってるよね。スープにもするんだろうけどやっぱまるごとオーブンに突っ込んでしまうんでしょうな。


日本ではブロイラーと地鶏くらいの違いしかフツーのスーパーなんかの売り場では見つけられないけど、アメリカはやっぱ肉食の国なせいか、鶏にもいろいろあるのよ。切ってある肉なら迷わず買えるけど、丸ごと料理するとなるとドレがよいやら困っちゃう。で、親切にココに一覧を作成してみました。参考資料はUnited States Classes, Standards, and Grades for Poultry 。ザックリ言うと、主に育成期間と雄雌の違いでグループ分けされてあるみたいデス。


Rock Cornish Hen
コーニッシュ種とロック種の交配でできた鶏の、5週間から6週間の若い鶏。調理可に準備した状態で2パウンド(およそ900グラム)以下。ほんとに小さくって、手のひらに乗るくらいの大きさ。普通は丸ごとオーブンで料理して一人分。スーパーとかでも売ってます。

検索してるうちにたどりついた養鶏やりたい電機技師さんのブログではロックコーニッシュについて「食用。ってか他に役に立たないヤツら。・・・ブサイクな鶏。(成長が早く)長生きしないからまあいっか。」とか書かれてあってビックリした。

コーニッシュ種。大人になっても1キロ未満の小ささなんですって。

 こっちはブロイラー。二羽並べてみないと大きさの違いはわかんないけど、たしかにコーニッシュはちんまりしてみえるね。


Rock Cornish Fryer / Roaster / Hen
ロックコーニッシュヘンの、幾分成長させた鶏のようです。もともと比較的小型のい品種で、一羽丸ごとで一人もしくは二人分の料理。コレもスーパーなんかではまず売ってますね。



Broiler / Fryer
13週以下の若い鶏、って言うのが規定だけど普通は7週くらいで解体されるらしい。雄雌どっちもあり。スーパーなんかで売ってるのはほとんどコレ。丸ごとで売ってるのは3パウンドちょっと(1.5kgくらい)の大きさです。ブロイラーって言うのはもともとアメリカで安く大量生産するように開発された雑種の若鶏のことを言うんだね。日本はブロイラーは普通8週間くらいで出荷されてるみたい。

 今回アタシが使ったのもコレ。大体3パウンドで値段は$2.93。一羽まるごと買って3ドルだよ。申し訳ないような値段。


Roaster / Roasting Chicken
3ヶ月から5ヶ月の鶏。このあたりになるとデカくなってきて、まさに一家でまるごとローストして食べるのにいいくらいの大きさ。大体5〜7パウンド(約2.3〜3.2kg)。


Capon
シャポン。去勢した雄の鶏で普通は8ヶ月くらい。高級食材でフランス料理に良く使われるよね。ブランド物になると臥籠で飼ったりするらしい。普通のスーパーとかではまず売ってないわ。


Hen / Fowl / Baking or Stewing Chicken
10ヶ月以上の雌の鶏。肉は固め。


Cock / Roaster
成長した雄の鶏。肉は硬くて色も濃くなる。何ヶ月の育成かは資料に書いてなかったけど、たぶんヘンと同じくらい、10ヶ月程度なんじゃないかな。


ブロイラーと地鶏について

鶏肉は若いほうが肉が柔らかくて好まれるし、飼育期間が短いから病気とかのリスクも減って低コストで管理しやすいってこともあって若鶏の大量生産=ブロイラーがアメリカで始まったのね。人の欲しがるものを安く大量に生産しようとするのはいかにもアメリカ的な発想。


アメリカに限らないけど、安く大量に、を極端に効率よくやろうとすると成長ホルモンを使ったり飼育場がイモ洗いのような様相になったりしてるファームが出てきちゃう。しかも鶏ってつつきあってグループ内の優劣を決める習性があるんだけど、ショッキングなことにその狭い中でつつき合って傷をつけないようにクチバシを切り落としたりするファームもあるんだって。当然そこから病気になりやすいし弱るから、そこでまたそれに対処した人工的なものを与えられたりするそうな。ええ〜。不自然なことをするとさらに無理をしなければならなくなるという教えの例に使いたくなるくらい典型的な話ですな。良心的な経営してるブロイラー生産者も当然たくさんあるんだろうけどね。


それに対して、日本で言う地鶏は放し飼いに近い環境で育成してます、ってことなんですって。比内鶏とかは特に育成が180日以上とか、一坪の飼育面積に1.5羽以下の環境を保持すること、とかしっかりした規定があるそうだ。これじゃブロイラーと比較するとコストが高くなるよなー。大人になるから雛に比べて肉は硬くなるけど(この点、歯ごたえがある、とかいう表現にするとポジティブだよね。言葉マジック。)味の濃いうまみの強い肉になるそうだ。


食肉の価格について

結論、やっぱ価格を安くするってことはどっかで無理をしてるってことなんだね。今回は買い物してからネットでアレコレ調べてコレを書いたんだけど、あんまり安く買えちゃう肉に疑問を持つようになったわ。


気になってきたので今回買った鶏の生産者、Purdue Farmsのサイトを見てみた。Purdue Farmsはアメリカで3番目に大きなシェアの鶏肉生産企業で、ウチの近所のスーパーではどこでも売ってるんだけど、「餌は100% 天然素材で、ステロイドや抗生物質、成長促進剤は一切使ってません」とのこと。ちょっとホッとしたけど、平飼いではないみたい。そりゃそうだよな、3ドルだもん。


鶏に限らず食肉を安く生産しようとすると不自然な飼育が必要になってくるから狂牛病とかも発生しちゃうのね。生産者にも問題あるだろうケド、安いことばかりを求める市場のデマンドに原因があるんじゃなかろうか。お料理スキさんのブログも膨大な数あるけど、こういうことを話題にあげる人は少ないし、いても生産者の責任ばかり問う人が多いような・・・。

食肉について知ろうとするとどうしても飼育とか屠畜とか痛いことを避けられないから勇気が要るけど、そういうことに関してまったく無知でいるのは日々料理したり食べたりしていることに本質的に向き合ってないように思います。肉食のみんな、一緒に勉強しようよ!


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